12歳の春、両親の住む鹿屋市を離れて、
谷山で寮生活を始めることになった。それ
からの6年間、様々な思いを乗せて私は垂
水フェリーに月に1度ほどのペースで乗るこ
とになった。
土曜日の午後、市電に乗って鴨池のター
ミナルに着いたころには天国気分。家族と
話すときにはもちろん鹿児島弁。反対に
鴨池港に向かうのは日曜の午後。なぜかお
腹が痛くなる。そんなときは甲板上で桜島
を眺めながら、ブルーハーツの歌を口ずさん
だ。そして寮に着いて友達と話すころには
別人になって、標準語を話し始めるのだった。
たった40分の短い航海。でも私にとって
垂水フェリーは2つの異なる世界をつなぐ
不思議なボートだった。
この年になってフェリーに乗ると、あの頃
の自分に会えそうな気がしてしまう。もう
1人の自分に。やっぱり異次元行きのボー
トなのかもしれない。
●撮影協力 大隅交通ネットワーク
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