<寄 稿>
人を裁くって

~10~

草彅事件の難しさ2

皆さんが裁判員になった時、どういう仕事をするのかを、草彅剛さんが逮捕された事件で、一緒に考えている。

 前回、まずそれぞれの犯罪ごとに決められている「構成要件」つまりパーツが全部揃うかどうかを判断することから始まる、と書いた。次に進もう。有罪に出来るかどうかは、この上にさらに二つの条件が必要だ。

 「違法性」「有責性」という。

 「違法性」というのは普通には「構成要件」が揃っていれば、つまり犯罪として決められている行為をすればそれだけで「違法性もある」と判断される。

 「違法性がない」とされるのは「正当防衛」などの特に決められた条件があるとき。草彅さんの場合はこの条件は無い。難しいのは医者の手術など。人の体に傷をつけるのは「傷害罪」なのだが必要な「医療行為」なら「正当性がある」ので有罪にならない。不必要な手術が有罪になるのはこのためで、医療過誤事件の難しさだ。

 「有責性」の方は、草彅さんの事件でも問題になる。

 皆さんは「責任能力」という言葉をメディアで見聞きされるだろう。「良いか悪いかを判断することの出来る能力があった。それなのにあえて犯罪になる行為をした」という「社会人としての責任」を問うのが、近代刑法の考え方で、逆に言えば「そういう能力がない状態で犯罪を犯しても処罰しない」となる。

 「責任能力」が無いのは、14歳未満の子ども(少年法の対象になる)、と「心神喪失者」だ。「心神喪失者」とは、「精神の障害によって良いか悪いかを判断することの出来る能力を失った者」で、「泥酔」も人をそういう障害の状態にさせるので、「服を脱いだのは覚えていない。気が付いたときは警察だった」という草彅事件との関係が出てくる。

 草彅さんは逮捕の翌日「処分保留」のまま釈放された。この時点で、起訴しても裁判で「心神喪失」として無罪になるかもしれないから、起訴しないだろうとも見られていた。5月1日その通り不起訴(起訴猶予)となった。

'09/05/05 掲載 

裁判員制度ニュース特集へ


戻る ]

コンテンツランキング

ニュースランキング

若冲・琳派と雅の世界
第2回地域再生大賞

373news.comに掲載しているコンテンツの著作権は、南日本新聞社または各情報提供者にあります。2次利用の可否は読者室までお問い合わせください。
Copyright Minami-Nippon Shimbun. All rights reserved.