'06/07/27 本紙掲載
「米軍再編」 来鹿の目取真俊さんに聞く

沖縄・名護市に住む芥川賞作家の目取真俊さんが14日、地方自治研究鹿児島県集会(自治労鹿児島県本部など主催)での講演のため奄美市を訪れた。「米軍再編」について聞いた。
しかし、沖縄で進もうとしているのは全く逆で、軍事的負担の増大だ。 航空自衛隊那覇基地の戦闘機は、F4から最新鋭のF15に更新される。陸上自衛隊は、沖縄市の嘉手納弾薬庫地区に、沖縄初のライフル射撃場を造ろうとしている。 普天間代替施設は、V字型滑走路と港湾用地を併せた巨大な「辺野古新基地」となった。空中給油機が岩国に移転すれば離着陸数は減るし、ヘリ部隊だけなら滑走路も短くていいはずだ。だが1800メートル級のものを2本も造るという。垂直離着陸機(オスプレイ)や戦闘機、空自機の使用をにらんでいるとしか思えない。 米軍と自衛隊の一体化や基地の共用が進むのが大きな問題だ。小泉首相は一昨年の日米首脳会談で「自衛隊を増強して米軍の肩代わりをする」と発言し、沖縄の地元紙が大きく取り上げたが、その通りになろうとしている。 空自は嘉手納基地で新たに訓練を始める。陸自は九州に出掛けないとできなかった実弾射撃演習を、キャンプ・ハンセンで始める。都市型戦闘訓練施設でのゲリラ戦訓練も行われるようになる。宮古・八重山への自衛隊配備も計画されている。 米軍は嘉手納以南の5施設を返還するというが、それは「嘉手納以北は返さない」という意味だ。嘉手納以南は遊休・老朽化した不要施設で、それを最新鋭の機能を持つ基地に統合するということだ。米軍の都合を優先したそんな基地整理を沖縄県民の負担軽減のように強調し、さらに3兆円もの負担を国民に納得させようとしているのは、全くのまやかしだ。 沖縄には現在、在日米軍専用施設の75%が集中している。防衛施設庁の試算では、この5施設と日米特別行動委員会(SACO)で合意した読谷補助飛行場などの返還を合わせても、削減は5%しかない。75%が70%になるだけだ。 「米軍再編」は世界規模での米軍配置の転換であり、沖縄の基地問題は日本全体の問題だ。自衛隊の再編、安保の実質改定、改憲とも密接にかかわる。 神奈川県のキャンプ座間に、米陸軍の第一軍団司令部を改編して移し、陸自中央即応集団司令部も移す。自衛隊と米軍が一体となって北東アジアから中東までの「不安定の弧」をカバーする構想は、集団的自衛権の行使と自衛隊の戦闘行動への参加が前提だ。 日本国憲法九条を変えない限りそれはできない。九条は、形骸(けいがい)化しているといわれても軍事行動の歯止めになっている。そこを明文改憲して「自衛軍」を米軍の属軍として海外派兵させようとしている。この動きには強く反対したい。 今の日本はアメリカ一辺倒、アメリカ依存の道を歩んでいる。一方で、「大東亜戦争」は侵略戦争ではなくアジアの解放を目指したものだとか、強制連行や従軍慰安婦はなかった−という独善的な歴史認識も広がり始めている。首相が靖国神社に参拝し続け、中国、韓国をはじめアジア各国から批判されても省みようとしない。これではアジア諸国の信頼は得られない。 沖縄では基地問題が何も変わらないという中で、本土への幻滅といら立ちが強まっている。日本人は、沖縄問題に熱心な人を含めて、沖縄に61年間基地負担を押し付けてきた。「安保を容認し米軍に守ってもらうというなら、日本人は基地を自分のところで引き受けよ」−そんな声が次第に大きくなっている。 沖縄に基地を押し付けて平然としている日本人には、私も怒りが募る一方だ。軍隊は住民を守らないという沖縄戦の教訓を今こそ肝に銘じたい。 (聞き手 編集委員・杉原洋)
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