大学時代から親元を離れて暮らしていたので、年末やお盆の帰省にはいつも泣かされてきた。大阪、東京に住んでいた私が鹿児島に帰る交通手段となれば、20時間近く電車を乗り継ぐよりも、やはり飛行機に頼るしかない。30年前でも東京−鹿児島間は5万円ほどした。スカイメイトを使えば半額で乗れたが、それも当日空席があった場合しか適用されないとなれば、ピーク時にはまず活用できず、兄も私も生活費の他に帰省費用を稼ぐためにアルバイトをしているようなものだった。
働くようになって少しは暮らしに余裕ができたが、それでも鹿児島−羽田間のゆるぎない運賃の高さは相変わらずで、当時6万5000円ほどの往復チケット代より、ラスベガスツアー(ホテル込み)代金の方が安いと知ったときは、「帰省手段の限られる鹿児島ばかりが足元を見られてる!」と閉口した。
帰省するにはお金がかかる…よそで暮らす人間にとってそれが当然のことかと思っていたら、近郊に故郷を持つ友人たちは「一度も飛行機に乗ったことがない」という人も多いのが意外だった。「新幹線を使わなくても電車で4時間だし。ま、5000円くらいで大丈夫!」と、気楽に月に一度は家族のもとへ里帰りをする姿を見て、私がやっとの思いでチケットを買ったり、空席を待つために朝から空港カウンターで並んだりして帰省する感覚とは、だいぶ思い入れが違うのだろうと想像した。
そんな話をすると「帰れる故郷があっていいね」と東京の友人はうらやましそうに言う。何を勝手な、こっちは大変なんだぞー! と思いつつも、やはり2つの居場所を持っていることは幸せだと思う。故郷が遠ければ遠いほど、それぞれが個々に存在感を増し、共に私の心のバランスを保ってくれることを実感する。
とはいえ、帰省したからといって特別な歓待を受けるわけでもない。ただ、お盆に向けて母や親戚のおばさんたちの鍋いっぱいのお煮しめが待っている。それを冷やしそうめんと一緒にいただき、翌日もその翌日もどんどん煮しまって味が濃くなっていく蕗(ふき)やトイモガラや里芋や厚揚げなんかを延々と食べて、昔話をする…それだけのことだ。それだけのために、お嫁に行ったいとこの姉たちは子供たちを連れて、3年に一度ほど、家出でもするがごとくお土産の荷物をいっぱい下げて、県外から里帰りしてきた。
さきほど東京からのお盆の航空運賃を調べたら、往復で8万円強にもなり、それでも空席はキャンセル待ちだった。悔しい! けど、遠い故郷ほど帰りたい、そんな鹿児島人気質が私はやっぱり好きだ。










